川のうた(14)
以下の初めの三首は、それぞれの川の特徴をとらえている。中伊豆を流れているのは、狩野川であろう。後の三首は、川に関わるそれぞれの動物の一瞬の状況を詠んでいる。川を泳いでいる蛇を見ていると確かに、小黒世茂の歌のような感覚になる。
ひかりみちてふくらむばかり河口まで冬ざれの野を貫きて河
米田憲三
常ありし大河不変の黄濁をひとり思えりアジアの色かと
大家増三
中伊豆に一本の川ありて光をとおす波立てる岩
高橋みずほ
海荒るる日は遠く来て白鷺の川辺に杭となりて佇ちゐる
藤岡武雄
秋あじは川のぼりきて捕はれて投げらるるとき鳴きてゐたりき
横山三樹
ながき影くねらせ川をのぼる蛇あるいは蛇をくだりゆく川
小黒世茂