天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

川のうた(15)

利根川(webから)

日本の大きな河川なかでも暴れ川には、次のように人の名をつけて特別扱いされているものがある。
坂東太郎=利根川筑紫次郎筑後川四国三郎吉野川。なお江戸・東京で大川と言えば、隅田川を指した。
上田一成の夢前川(ゆめさきがわ)は、兵庫県姫路市を流れる二級河川である。中根 誠の歌の結句の意味は、大利根川を見ていると、怒り・恨み・嫉妬 などの火のように激しく燃え立つ感情が納まるということ。つまり大利根川が燃え立つ感情を鎮めてくれるのだ。


  風を従へ坂東太郎に真向へば塩のごとくに降りくる雪か
                    石川一成
  大川の角度かへたるあたりのみ流れが見えて夕日耀ふ
                   利根川 発
  ゆつたりと利根川流れ漣立つ限りもあらぬ春の光りや
                    松本清
  万丈のはての四国三郎身の力ゆるめて紀伊の水道におつ
                    玉井清弘
  夢前川河畔の木々にこもり鳴くかなかなのあり日のくれむとす
                    上田一成
  しろがねの太刀のごとしもああわれを育みし野に利根川(とね)は耀く
                    関根和美
  それぞれの石に響きを生みながら大利根川は心火を奪ふ
                    中根 誠