天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

留魂歌(1/5)

吉田松陰の肖像

物理的にお互いが別れ別れになっても魂は寄り添うことができると信じられてきた。現代でも「心残り」「心ここにあらず」「面影」などと言う。この現象が遊離魂である。遊離魂が特定の恋人、家族、物、土地や国などに留まる時が留魂である。吉田松陰の良く知られた次の辞世歌では、自分の身は滅んでも日本人たる魂は日本国に留めおいてほしい、と願っている。

 身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留めおかまし大和魂
                     吉田松陰

表題は筆者の造語であるが、背景にはこの松陰の歌と松陰自身が名付けた遺言状「留魂録」がある。以下では、遊離魂、留魂の諸相とそこで詠まれた歌をみてゆくことにする。