同窓会―伊豆高原にて
今回は五十年目の同窓会(東京大学工学部計数工学科応用計測コース、昭和43年卒業)になる、ということを前田忠昭さん(幹事)が話してくれた。毎回出席してきたわけでないが、感慨無量である。学生時代からの常連がそろった。とは言え、数人があの世に旅立っている。今回は十名が、一泊二日で伊豆高原のルネッサ赤沢に集合した。7名は、熱海に集合して、昼食後2台の自家用車に分乗してホテルに行ったが、私はいつものように単独行動。電車で向かった。伊豆高原駅から徒歩で、対馬(たじま)の滝、橋立の吊り橋を見て回った。笠をささなくて済んだのは幸運であった。
対島の滝と橋立の滝の間の山道に次の水原秋櫻子の句碑があった。
磯魚の笠子もあかし山椿 秋櫻子
海岸沿いの森には、見事なクロマツの大木が立ち並んでいた。また叢には、街中では見られないほど生きいきした石蕗の花が咲いていた。
ホテルの温泉に入った後は、食堂で夕食をとりながら、またその後は幹事の部屋に移って、酒類を飲みながら、近況や政治や野球の話題で盛り上がった。翌日は、2台の自家用車に分乗して帰る友たちと別れ、一人電車で帰途についた。
竹林のとなりに蜜柑畑かな
波音にねむたくなりぬ石蕗の花
橋立の吊り橋ゆるる石蕗の花
吊り橋に迂回路はあり石蕗の花
晩秋のねむりさまたぐ鼾かな
涛音にそだてられたる大松のあまた立ちたり橋立の森
あの先生この先生はお元気か当時思ひて話ははづむ
お互ひのからだの調子話しつつ年相応の命かなしむ
それぞれの酒量きまれり 飲みすぎと見えたる友も酔ひつぶれざり
いつまでも寝つかれざりき相部屋の横のベッドの鼾すさまじ
相部屋の友のいびきの激しさにいつしか慣れてひととき眠る
友たちと手を振り別る青空の朝日まぶしき伊豆高原に