死を詠む(3)
命あらば逢ふよもあらむ世の中になど死ぬばかりおもふ心ぞ
詞花集・藤原惟成
ねがはくは花のしたにて春死なんそのきさらぎの望月の頃
山家集・西行
死ぬとても心をわくるものならば君に残してなほや恋ひまし
千載集・源 通親
皆人の知り顔にして知らぬかなかならず死ぬるならひありとは
新古今集・慈円
死なばやとあだにもいはじ後の世は面影だにも添はじと思へば
新勅撰集・俊恵
恋ひわびてなど死なばやと思ふらむ人のためなる命ならぬに
続古今集・藤原為氏
悲しみを知らぬ人等の荒らけき声にもわれは死ぬべく思ほゆ
伊藤佐千夫
韓(から)にして、いかでか死なむ。われ死なば、をのこの歌ぞ、
また廃(すた)れなむ。 与謝野鉄幹
自分が死ぬ場所はこうありたい、恋しい人との死別に際して沸き起こる思い、何人も死ぬと決まっているのに死について本当に知っている人は少ない、等々歌にしたい心情はいろいろである。誰もがうらやむ死にざまは西行であろう。歌に詠んだ通りの場所と時期に亡くなった。河内の弘川寺を訪ねたことがあったが、まことに交通の便が悪いところで、よくぞこうした場所に住んだものと感心した次第。右の画像は、西行墳墓の並びに立っている「ねがはくは」の歌碑である。
(ブログ2016-11-30 わが歌枕―河内国弘川寺 も参照ください。)