天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

感情を詠むー「悔しさ」(4/4)

  封じたるのちの思ひに悔あれど手紙は言葉過ぎざるがよし
                       来嶋靖生
*手紙を書いて封をした後での感想である。誰しもにありそうな感情。

 

  つくつくほふし悔いは誰しもかなしきを紅毛ゆれてもろこし実る
                      馬場あき子
  なんとなく生かされている悔しさは宙吊りのままの自転車のような
                      楠田智佐美
  「和を以て貴しと為す」悔恨は鉛の如し夕映えの帰路
                       山下 勉
*作者は誰かと喧嘩したようだ。

 

  やけくそになりてもの書く悔しみぞ夏雲われの首(しるし)もてゆけ
                       喜多弘樹
  一年を棒に振りたるくやしさにかかはりもなく木瓜の花咲き
                       永井陽子
*永井陽子は、愛知文教女子短期大学に勤務していた時に肝炎にかかり入院していた。
 そのあと、自殺したと伝える。享年48。

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