天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー魚介(5/7)

  鰰(はたはた)を吊り干す軒に夕しばし潮の照りの寒くかがやく

                       木俣 修

*鰰: スズキ目ハタハタ科の海水魚。「ハタハタ」は雷の鳴る音の擬音語。晩秋から初冬の雷が多く鳴る季節に、秋田・山形の海岸へやってくる魚であるところからの命名。(百科事典から)

 

  一杯の美酒(ウマザケ)のみてまづ酔はむ見よ妹ここに鯵のヒヤウバを

                       服部躬治

*ヒヤウバ: 「百ばかり」という意味。

 

  雪水の清きにをりし姫鱒のいまだをさなきもの焼かんとす

                      鹿児島寿蔵

  章魚(たこ)の足を煮てひさぎをる店ありて玉の井町にこころは和(な)ぎぬ

                       斎藤茂吉

  寺々の落葉踏みきて入る鮨屋赤身透きとほる蝦(えび)を握らす

                       大野誠

  北海の冷えし海鼠のはらわたを買ひて提げたり黒衣まとひつ

                      倉地与年子

*なんとも不気味なとり合わせ。人間の生活の一面をクローズアップした。

 

  ゐろりべにわれら坐りて夜深し黒部川の大きなる岩魚(いはな)を炙(あぶ)る

                       川田 順

f:id:amanokakeru:20200726071005j:plain

海鼠 (webから)