天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

囲碁

 囲碁のはじまりは、四千年ぐらい前の中国と言われている。紀元前770~前221年ころ春秋・戦国時代には、囲碁は戦略、政治、人生のシミュレーションゲームとして広まったらしい。

 

  ふるさとは見しごともあらず斧の柄の朽ちしところぞ悲しかりける

                      古今集・紀 友則

*「故郷に帰ってきてみるとまるで様子が変ってしまった、あの 「斧の柄が朽ちた」場所が懐かしく思われます。」

斧の柄の 朽ちしところ: 「晋の王質という者が山に樵に入ったところ、仙人が碁を打っていた。それを面白がって熱心に見物していると、いつの間にか斧の柄の部分が朽ちてしまった。これはいけないと思って、山を下りると、かつて知っていた人々はもう誰もいなくなるほど時間が経っていた。」という故事による。

  白波のうちやかへすと待つ程に浜の真砂の数ぞつもれる

                      拾遺集村上天皇

*浜の真砂: 碁石

 

  碁をいどむ下碁の友に忙しかる机を離れいざなはれたり

                         尾山篤二郎

  碁に敗けしのちをゐたれば夕映のなかより豆腐屋のラッパがきこゆ

                          滝沢 亘

  おほよそは過ぎゆきぬらし碁笥(ごけ)ふたつ並べ置かるる盤上のかげ

                         桜井登世子

  いらへなき現(うつつ)に人はなほ在りて碁の石打てり秋の日が射す

                         桜井登世子

  此の人の癖を知りつつ碁を争ふ知られてあらむわが癖もまた

                          大野利夫

  紫式部がたましひ見ゆるといひし碁をそと習ひをり夜更けてひとり

                         馬場あき子

  碁の敗けの混みたる一人なぐさめて呪(まじな)ひのやうな一手伝授す

                          香取俊作

 

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