火山、温泉(4/4)
ゆあみして泉をいでしやははだにふるるはつらき人の世のきぬ
山の上に湧く温泉のあつくして素枯れし薄少しばかり青し
音たてて湧く湯は泥をふき上げていはほに残る白雪を染む
五味保儀
*いはほ: 巌でごつごつした大きな石、岩。
湯口(ゆぐち)より溢れ出でつつ秋の灯に太束(ふとたば)の湯のかがやきて落つ
宮 柊二
蛙鳴くひねもすの雨温泉にひたれば泥のごとき香のあり
佐藤佐太郎
*ひねもす: 一日中。
刻々に迫る揚(よう)湯(とう)の時待ち待つ丘の中腹(なから)につどへる人・人
*揚湯: 温泉を出すこと。
湯に肩を打たれて立てば悔恨の形のままに頭(かうべ)垂れたり
常磐井猷麿