文(房)具を詠むー筆・鉛筆・ペン(3/3)
万年筆の原理は、ペン軸の内部に保持したインクが毛細管現象により、溝の入った芯を通してペン先に持続的に供給される構造にある。
日本における鉛筆は、徳川家康が最初に使用したという。しかし定着はせず、輸入が始まるのは、明治時代になってからだった。日本での鉛筆の量産は、1887年に新宿で、真崎鉛筆製造所(現在の三菱鉛筆)創業者・真崎仁六によって始まった。
ボールペンは、ペン先に小さな鋼球を内蔵し運筆とともに回転して軸内のインクを滲み出させる構造を持つ。
フェルトペンは、ペン先にフェルト(動物の毛を圧縮してシート状にした繊維品)や合成樹脂を使用し、毛細管現象によってペン軸からインクを吸い出し描画する構造。
万年筆・時計とつねに身辺の用を足せしものも用なくなりぬ
木俣 修
つねのごと萬年筆が吸ひこみしインクの重み指先に知る
窪田章一郎
万年筆買わむと寄りし新宿は春雨打ちて人を走らす
三枝昂之
冬の夜の夜のしづまりにぺんの音耳に入り来つ我がぺんの音
ボールペンはミツビシがよくミツビシのボールペン買ひに文具店に行く
書き出しの藍の掠(かす)るるボールペンなぞり直してわが署名せむ
篠 弘
ボールペンのキャップつけねば手応えのわずかに足らぬ文字書きながら
吉田恵子
手さぐりにフェルトペンありなお吾に表現という残るよろこび
近藤芳美