天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー骨(3/4)

  長雨によみがえるいかりいんぱあるのくさむら中の骨の集積

                        加藤克己

*いんぱある: インパール作戦が実行された土地。1944年(昭和19年)3月に[帝国陸軍により開始、7月初旬まで継続された。作戦に参加したほとんどの日本兵が死亡した。

 

  耐へ難くひびき来るなり夜の庭にいつまでも犬の骨を噛む音

                        岡野弘彦

  シャツぬぎし肋(あばら)のうごきうつくしき汝かなぶんを抛りて去りぬ

                        森岡貞香

  母の遺骨もちて旅ゆくかすかなる母の韻(いび)きは風にまぎれず

                        安永蕗子

  タイルの上を転がりゆける肋骨の位置定まれば血が滲み出づ

                        原田禹雄

*なんとも不気味な歌だが、手術の情景なのだろうか?

 

  もろ腕をさし出すときにんげんのさびしきまでの鎖骨のくぼみ

                       村山美恵子

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かなぶん