天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

姉、妹を詠む(5/7)

  思ひがけぬ熟語つかひて口はさむ下の子は姉の本も讀むらし

                     五島美代子

  いもうとが手を貸したこと逃げのびる筈の一羽を雪のまうえで

                      平井 弘

  濡るる燈に 雪舞ひ舞ふは、現し身の見ゐるうつつや。妹は死にたり

                      中井昌一

  巴里北駅の灯明りの下かすかなる相似の面並ぶわれといもうと

                      河野愛子

  さやさやと家族まもれる妹を肉袋とし夢に吊るしき

                     阿木津 英

  幼くていのち消えたる妹の月日のほとり鳴く水鶏(くいな)かな

                     岡部桂一郎

*水鶏: ツル目クイナ科の鳥の総称。スズメ大から小形の鶏大のものまで約130種が世界中に分布。日本では11種が知られる。冬に湿地や水田でみられる。(辞典から)

 

  東西にのびて憩へるいもうとの四肢マシュマロのごとく匂へり

                      辰巳泰子

*マシュマロ: 名称は、原料となったアオイ科のウスベニタチアオイの英語名、marsh mallow に因む。

 

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水鶏