天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

姉、妹を詠む(4/7)

  傘二つひろげて待てば妹はピアノに鍵をかけて出で来ぬ

                      大西民子

  われに気づき右手あげたる妹に黒の手袋させゐてさびし

                      大西民子

  われの死を見ずにすみたる妹とくり返し思ひなぐさまむとす

                      大西民子

*妹が先に死んだときの感慨であろう。

 

  円柱は何れも太く妹をしばしばわれの視野から奪ふ

                      大西民子

  日の暮れに連れ出づる犬の有らぬこと思ひてをれば妹の言ふ

                      大西民子

  妹といふあいらしきもの日も夜もわがかたはらにゐたる日ありき

                      大西民子

  妹のまだ居たるころ風呂釜に二列に点るガスの火ありき

                      大西民子

  姉妹にて分ち持つ鍵緋の房をつけし一つは妹が持つ

                      大西民子

*大西民子は、夫との悲惨な離婚劇と妹との密な関係を詠みつづけた。ここに挙げた作品は妹に関するもの。

 

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風呂釜