わが歌集からー鳥類(14/15)
善知鳥(うとう) 2首
地を出でし善知鳥(うとう)の雛は六月のエゾカンゾウの風に吹かるる
嘴にイカナゴあまた咥へたるウトウ帰り来天売(てうり)の島に
オウム 2首
「おはやう」と「ばか」くり返すオウムゐる人語悲しき公園の朝
みな目つきをかしくなりて人を見るオウム棲むとふ深草の里
懸巣(かけす) 2首
水涸れの排水溝に鳴る落葉視線の遭へば懸巣飛び立つ
さはがしくカケス啼くなる峠路の草むらかげに咲く鳥兜
雁 2首
水草の茎を掘り合ふ白雁の群れに一羽の見張り役をり
籾残る田を探してや雁の群蕪栗沼の朝を飛び立つ
キンクロハジロ 1首
餌もたぬわが近づけば背を向けてキンクロハジロみな去りゆけり
九官鳥 1首
九ちゃんと通行人に呼びかくる九官鳥は寂しきろかも
極楽鳥 1首
肩に手をつらなりてくる「森の人(おらんうーたん)」極楽鳥と島に住まへり
コウノトリ 1首
嘴にくはへて選ぶ白き死魚人工飼育のコウノトリ生く
鵐(しとど) 1首
頼朝の隠れし窟(いはや)鵐(しとど)とふ鳥飛び立ちて敵くらませり
ツグミ 1首
己が影のサイドミラーに挑みては疲れて休む磯(いそ)鶫(つぐみ)かな
鷭 1首
寄る波をおさへて葭の生い茂る浮巣に鷭の巣籠れる見ゆ
ヒシクイ 1首
渡り来しヒシクイあまた列なりて筑波颪の田にそよぐごと
ほととぎす 1首
ほととぎすしきりに啼けばあやめ草日に異(け)に咲きて何かなつかし
ほろほろ鳥 1首
肉ふたきれ緑の塩を銀紙にほろほろ鳥の揚げ物の出づ
マモウ鳥 1首
たたなはる山のはざまの白子森マタギの忌みたるマモウ鳥棲む
ミサゴ 1首
上空にミサゴ来れば首伸ばし葭の葉と化すヨシゴイ親子