歌集『夜のあすなろ』(3/6)
*現代短歌に添ったカタカナ語
着水のしぶき激しき雄がまさる紫イトマキエイの求愛
いつのまに入り込みしかフリースのわがポケットの一匹の蜂
マンションのケージに兎ねむりをり冷蔵庫のなか白葱は伸び
篠笛にあまりにアラブヴァイオリン響きあふゆゑわが泣かまほし
アッパッパせりだし重き西瓜腹の夏すぎてわれ男児を産みき
若き日はジャズマンなりき新潟の海辺にアルトサックスを吹く
みちのくの月光菩薩の御脚(みあし)おほふゆるきドレープふとおもひ出づ
胸の上にケータイひとつ握りしめCTスキャン撮られてゐたり
雨の日は三面鏡をみがかうかパッサカリアをひくくながして
いつしかも月はうつすら雲に透けコノハズクよりメールがとどく