天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

『楽園』(4)

 出張先のパソコンから入力しているので、詳細な解説をつける余裕がない。
それは後日にゆずる。


G 結句の特徴
  詩語探る脳細胞に軋みつつ迫る両刃の振子・快楽
  書物溺愛症なる性的逸脱を容さざるゆえ鬼火・漁火
  熟れる桃、熟れる無花果、熟れる乳、すだれの外の刹那・稲妻
  エレファントマンの悲哀をなまぬるき空気の夜半の罰なり 罰だ
  倫敦にジャック・ザ・リパーさればこそこの街娼に愛を!憎悪を!
  ヤマザキはいまも狙撃の姿勢にて或る標的を狙うか、狙え
  虹或いは絶望の橋、夕闇に侵食される、侵食されよ
  大正九年十一月八日月曜日畳の上の鱶や眞神や


H 無限ループ(結句から初句あるいは途中の句に返り無限に
  繰り返す形)
  反体制的キャスティングの妙にして警官たこ八郎の勇姿は
  のみならず夏草繁茂する鉄路 のみならず夢のみならず日日
  そののちの日日か羽毛が空間に飛ぶそののちのスローモーション
  詩的なる妄想紡ぐ触媒のこの椅子というひとつフォルムも


I リフレイン
  燃えつきて白き灰への蕩尽はジョーのみならず のみならず今日
  香港に悪疫兆す鳳仙花の季節ならねど悪疫きざす
  背面に陽を浴びながらお台場の自由の女神ジユウノメガミ
  君の席はない 君の席はない 君の席はない、と虚子翁が言う
  モノクロの紙魚は私だ 廃園が廃園となる前の私だ
  壁の絵の都市の落日やがて来る落日窓の外の落日
  木星に縞模様ある不可思議を不可思議のまま幾千の夜半
  カセットの音声日日に劣化して死者の声ゆえ日日劣化して