ゆりかもめ
ユーラシアの北部で繁殖し、わが国には冬鳥として渡ってくる。冬羽は背と翼が淡青灰色で他は純白、脚と嘴が赤い。川の上流や内陸部の湖にもやってきて、魚、エビ、昆虫などを食する。和歌や俳句では、みやこどりという雅称を使う。一方、鴎は背と翼が灰青色、風切羽の先端は黒で、他は白色。脚は黄色あるいは淡赤色。海岸や港湾にウミネコ、ゆりかもめなどとも群れる。雑食性。ウミネコは黄色い嘴の先端に赤と黒の模様があること、また猫に似た鳴き声であることから他の鴎族と区別される。ごめとも呼ぶ。
鴎らがいだけるあし趾の紅色にやさ恥しきことを吾は思へる
近藤芳美
寒干しの鱈がからから吹かれゐる北緯四十五度ごめ海猫群れて飛ぶ
山名康郎
みやこ鳥、みやこのことは、見て知らむ。我には告げよ。
国の行すゑ 与謝野鉄幹
餌を撒くわが掌と知りて集ひくるいづれ破天の野のゆりかもめ
安永蕗子
安永蕗子の歌の「破天」は辞書に載っていない。造語であろうか、象徴性の高い魅力ある言葉になっている。
順番に延寿の鐘をひとつづつ撞きて手合はす中年夫婦
尖塔と釈迦如来像金色の仏舎利塔は山頂に立つ
常緑の木々の葉陰に寒椿ちり残りたる赤き一輪
朝方の食事終はりて群るるらし鴨の浮き寝の大波小波
突堤に腹ばひ眠るユリカモメ今日のひと日をいかに過ごさむ
辺津宮の茅の輪をくぐり手合はせて御籤をひけば顔曇りたり
江ノ島に来し証とや残しけむ粘土板なる役者の手形
猫多き江ノ島にきて老人の猫なで声といふを知りたり