天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

建国記念日

キンクロハジロ(横浜三渓園)

 紀元節のことである。日本書紀の記述に基づき、1872年太政官布告で、1月29日を神武天皇即位の祝日と定め、翌年紀元節命名した。太陽暦では、2月11日に当たる。
戦前の紀元節は、戦後の昭和二十三年に一旦廃止されたが、昭和四十一年に、建国記念の日として復活した。建国の日、建国祭、紀元節 などと共に春の季語。近年は、この日に日の丸の国旗を掲げる民家はめっきり少なくなった。わが家のように国旗自体を持っていない家庭が普通になっているのだ。


      鳶の笛雲ふきちつて紀元節    石橋秀野


 この日は各地の梅園で色々の催し物が開催される。小田原の曽我梅林では恒例の流鏑馬が、横浜の三渓園では茶会や琴演奏会などがある。それで今回は、三渓園に行ってきた。
池に集まる鴨の群がえらく人に馴れているのに驚いた。上野の不忍池でもそうだが、パン屑などの餌を与えるからである。


      人目ひく萼はみどりの梅の花
      琴の音が御堂にこもる紀元節
      

  カリンの実残れる下に釜炊きて麦茶ふるまふ建国記念日
  如月の風通さむと障子開く電灯暗き合掌造り
  パン屑に寄りくる鴨の群見ては鳥インフルのレベル思へり
  鵜が一羽舳先にとまり羽ひろぐ淡き春日の芦刈小舟       
  それぞれに水脈ひきてくる金色の眼かがやくキンクロハジロ
  餌もたぬ我を見分けて離れけり子に集まりしキンクロハジロ
  そこここの茶室に客の集ふらし履物そろふ縁側の石
  和服着て茶室につどふ女らの慎みふかき建国記念日