天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

柘榴の実

藤沢市新林公園にて

 ザクロはインド北西部からイランが原産。わが国には平安時代より以前に渡来したという。まだ一度も食べたことがない。


     恍惚たりざくろが割れて鬼無里(きなさ)なり   岡井省二
     恵林寺の前火のごとき石榴売る         宮田正和


  ざくろの不逞な開口 沈黙の白磁の皿にのけぞっている
                        加藤克己
  暴王ネロ柘榴を食ひて死にたりと異説のあらば美しきかな
                        葛原妙子
  秋はざくろの割れる音して神の棲む遊星といふ地球いとしき
                        山中智恵子
  いびつなる柘榴一顆がころがりて自爆をなさむ刹那の声す
                        篠 弘
  祖父(おおちち)の処刑のあした酔いしれて柘榴のごとく父は
  ありたり                  佐伯裕子

  柘榴割る力きたりて国家焼くべき火はいづくにねむるいづくに
                        山田富士郎