天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

石榴

二宮町の路傍にて

 「ざくろ」は、柘榴とも書く。実には薬効があり血の味がするというが、まだ食したことがない。ペルシャ・インド原産で、日本には平安時代以前に渡来したらしい。


     石榴の実一粒だにも惜しみ食ふ   山口誓子
     実ざくろや妻とは別の昔あり   池内友次郎


  天地(あめつち)の恩寵うけて輝けりざくろの赤き実
  むべの青き実             宮 柊二


  おおかたはかなわぬ願いも捨てがたく机上にながく
  柘榴を曝す              久泉迪雄


  柘榴割る力きたりて国家焼くべき火はいづくにねむるいづくに
                    山田富士郎
  つらぬかば木端微塵の夕焼ぞ 柘榴にナイフ近づけていく
                    小宮山栄子
  双の掌にあまる暗朱の大柘榴冷えびえとして東洋の血は
                     安永蕗子
  遠き日の指切りなどが想われる万緑叢中ざくろが開く
                     三枝昴之


2009年9月4日のブログ「小池 光のざくろの歌」には、西東三鬼の有名な俳句「露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す」に関するエピソードを紹介してあるので、ご参照頂きたい。