天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

果物のうたー柘榴

 柘榴はミソハギ科ザクロ属落葉小高木、また、その果実のこと。原産地については、
西南アジア、南ヨーロッパ北アフリカ など諸説ある。日本には923年に中国から
渡来したという。(参考: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』)

 

  夏の蚕(こ)はいまだ稚(おさ)なし。
  背戸にそひ
  柘榴のはなのあかく咲きゐる。     石原 純

 

  机なる柘榴ゆびさし見飽きなば賜(た)べよ喰べむと吾子の言ふなる
                     若山牧水
*牧水は柘榴を机の上に置いて見詰めていたのだ。傍の子供はじれて、見飽きたら
 頂戴、食べるから、と父親に言った。

 

  女(め)の童(わらは)あかき石榴を掌(て)に置きてゐやまひ正し九九をこそよめ
                     北原白秋
*石榴を掌にのせて、居ずまいを正して九九を読む女の子とは、珍しくも
 微笑ましい。

 

  とり落さば火焔とならむてのひらのひとつ柘榴の重みにし耐ふ
                     葛原妙子
*口を開けた赤い柘榴の実と火焔との対比。

 

  フラスコの球に映れる緋の柘榴さかしまにして梢に咲けり
                     葛原妙子
*この柘榴は、花の咲いている樹を指しているようだ。

 

  まなじりを上げておもえば短か夜を石榴の花の散りつくす風
                    馬場あき子
  再びの薄暑到りて肌(はだへ)うすきあはれのなかに柘榴熟れゆく
                     安永蕗子

 

     露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す 西東三鬼
     大津絵の鬼出て喰ふ柘榴かな  黒田桜の園

f:id:amanokakeru:20191016000309j:plain

柘榴