天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

早春賦―吾妻山―

吾妻山山頂にて

 晴天の新年には、神奈川県二宮町の吾妻山山頂は、菜の花畑と積雪の富士を見る人たちで賑わう。東側斜面では水仙の花盛り。まことにめでたい早春の光景である。二宮が長寿の里と呼ばれる所以であろう。右の写真は、山頂から富士を眺める定番のアングルで撮ったもの。吾妻山紹介のパンフレットや新聞記事で見かける光景である。


     新玉の松のみどりと海の青
     水仙や沖の島影おぼろなる
     うらじろやあるかなきかの風に揺れ
     カンバスに富士と菜の花 吾妻山
     積雪の富士のなだりに雲の影
     菜の花や下界は青き相模灘


  息を継ぎのぼり来たれば朝光(あさかげ)の木立ににほふ
  水仙の花


  注連縄の御幣鳴らせる初春の風の冷たき浅間神社
  はだか木の幹をのぼれる啄木鳥は木をつつきては
  ギイと啼きけり


  献金の額を記せる碑(いしぶみ)の三基立ちたり吾妻神社に
  あらたまの御幣の下に鈴鳴らす榊、千両、松をそなへて
  「吾妻山純情」の詩にしのびたり日本武尊と弟橘姫を
  朝光の木立に入りて水仙のかがやくを撮る翁媼
  (おきなおうな)は


  あらたまの年の初めの吾妻山富士を望みて菜の花が咲く
  おーい富士よ雪がつもつて寒からう吾妻山には菜の花が咲く
  とりがなく吾妻山には水仙も菜の花も咲くむつききさらぎ