天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

新春詠(4)

二宮町吾妻山にて

 相州春日神社は、横浜ドリームランドが廃園になった後も残った。もともと横浜ドリームランドの発展と繁盛を願って敷地内に奈良の春日大社の分霊を勧請して建立されたものだが、後に神社とドリームランドとは敷地・組織とも切り離された。その際、この名前に改名された。小さな神社だが、新春には近所の人たちが参拝する。
 NHKのニュースで、二宮町吾妻山の菜の花が見ごろになったと伝えた。さっそく出かけてみた。毎年のようにご紹介しているが、今年の「富士と菜の花」の写真もいつもの撮影場所から撮った。水仙も花盛りである。
 里山に行けば、溜池や田の面には薄氷が張っている。まさに初春の風情。


     初夢や岡井隆に話しかけ
     初詣尻の毛白き神の鹿
     鳴きやみて藪にとびこむ笹子かな
     吾妻はやメジロ菜の花雪の富士
     菜の花に目白とりつく吾妻山
     西方に雪の富士見ゆ吾妻山
     薄氷の田の面まぶしむぬかる道
     初春の庭に飛び立つ竹トンボ


  翡翠の来る溜池の近ければ名づけ親しむ翡翠農園
  両腕に白菜抱へ出できたる翡翠農園溜池近き
  朝の日に咲く水仙のかたはらに未だ枯れざる石蕗の花
  菜の花と富士を撮らむと人の寄る撮影スポットにわれはも
  しゃがむ


  鳩の数カラスよりずっと多けれどカラスが寄れば鳩は
  飛び立つ


  鳩のむれカラスの群とせめぎあふ岡井隆の修辞思へば
  欠けたるは文化勲章のみならむ茂吉と競ふ岡井隆
  老人の茂吉の写真世にあれば恥ずかしからず岡井隆
  表現と記録の間(あひ)に詩のあれば毎日数首詠む
  『ネフスキイ』


  おづおづと岡井隆に声かくる己が言葉に夢より醒めつ
  薄氷(うすらひ)の張りたる池に翡翠の姿はあらず里山
  の朝


  老人の手を飛び立ちし竹トンボ屋根には行かず植木に
  止まる


  古民家の庭のベンチの竹トンボ子らが手にとり飛ばさむ
  とする