天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

水鶏(くいな)

相模川河口にて

 鶴目クイナ科。冬鳥と夏鳥があり、キョッキョッという鳴き声を古来、「くいなが戸をたたく」と考えた。これは、夏鳥のヒクイナのことをいう。右の写真はクイナ科のオオバンで、相模川河口で見かけた。


  おしなべて叩く水鶏におどろかばうはの空なる月もこそ入れ
                  源氏物語・澪標
  たたくとも誰かくひなの暮ぬるに山路を深く尋ねては来む
               更級日記菅原孝標女
  ゆふ月夜ほのかに見ゆる小板橋したゆく水にくひな鳴くなり
                    太田垣蓮月
  水ぐるま間どほになりしさと川のふけゆく月に水鶏なくなり
                    金子薫園
  都草の黄なる花さく丘のみち水鶏の聲をけふ聞けるかも
                    相馬御風
  草蔭に卵五つを隠したる水鶏のゆくへ知らず春逝く
                    安永蕗子