天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

さくらんぼ

アメリカンチェリー

 日本のさくらんぼは、バラ科の果樹オウトウの果実。実桜と呼ぶ欧州系の甘果オウトウで、明治初年に渡来したという。梅雨の少ない地方で作られ、山形県が主産地。
輸入もののアメリカンチェリーは、主にアメリカ西海岸で取れる。代表品種はビング種で、輸入量の9割を占める。なお、このビング種を開発した人は、園芸家のSeth Lewellingと作業主任で中国満洲族のAh Bingだった。「ビング種」の名前は、作業主任からきている。今では、オレゴン州ワシントン州、カナダのブリティッシュコロンビア州で栽培が盛ん。


  桜桃の盛りの頃に来よといふ招きは待たむ八十
  ふたつ越ゆ            山本友一


  すなほなるよろこびもなべて過ぎゆかむ光る櫻桃を
  今日もぐことも          斎藤 史


  どす黒きチェリーの粒実皿に盛る悪をたくらむ
  愉しさに似て          杜沢光一郎


  ひさかたのあめりかん桜桃くろずみてあれども闇を
  抱かぬ果実            藤井常世


  桜桃よ皿にあふれてこぼれたるこのひとつぶの眼
  恋ほしも             小池 光


  母たちはつね発見し教ふるなり青き桜桃に睫毛
  あるさへ            米川千嘉子


  思い出す人ある午後にさくらんぼを並べて作る
  失恋のうた            俵 万智