天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

岩煙草

鎌倉長谷寺にて

 イワタバコ科イワタバコ属の多年草で、福島県以南から九州にかけて分布。わが近辺では、鎌倉の谷戸の崖によく見かける。特に、東慶寺墓地の崖のものは、よく知られている。名前の由来は、葉が大きくて「タバコ」に似ているところから。6月から8月ごろ、花茎を伸ばして紅紫色の星形の花を咲かせる。右の画像がそうである。
 古くは、山萵苣(やまぢさ)と言った。万葉集に、次の歌がある。


  山萵苣(やまぢさ)の 白露しげみ うらぶるる 心も深く
   わが恋やまず              柿本人麻呂


[追伸]「やまぢさ」あるいは「ちさ」が岩煙草であるというのは、一説であるが、万葉集には他に次の二首がある。ひとつは長歌

  気(いき)の緒(を)に思へるわれを山ぢさの花にか君が移ろひぬらむ
  ・・・世の人の 立つる言立 ちさの花 咲ける盛りに
   はしきよし ・・・(長歌