バラ科の果樹オウトウの実。実桜と呼び、明治初年に欧州から渡来した。ややこしいが、桜の実とは違う。こちらの方は、さくらんぼより小さい球形の実で、熟すと黒紫になる。
大磯の小さな谷川の傍に見つけたさくらんぼが右の写真である。
ま夏日の日のかがやきに桜実(ご)は熟みて黒しもわれは食みたり
斉藤茂吉
くもりたる土に落ちつぐ桜の実さびしきものか梅雨に入る今日
松村英一
色づきて一つ見いでしさくらんぼみれば幾つも葉かげに赤し
三ヶ島葭子
どす黒きチェリーの粒実皿に盛る悪をたくらむ愉しさに似て
杜沢光一郎
思い出す人ある午後にさくらんぼを並べて作る失恋のうた
俵 万智