天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

青梅

鎌倉・明月院にて

 青葉の陰に丸い顔をいくつも並べている情景は、微笑ましい。夏の季語。傍題に、梅の実、実梅、小梅、煮梅、豊後梅、信濃梅、甲州梅 など。梅が実る季節の長雨を梅雨と言う。


     うれしきは葉がくれ梅の一つかな   杜国
     青梅に眉あつめたる美人かな     蕪村
     青梅に手をかけて寝る蛙かな     一茶
     青梅に今日くれなゐのはしりかな  飴山 實


  青梅が毒性いだく季節にて明るし仮死のごときまひる
                     生方たつゑ
  ならざりし恋にも似るとまだ青き梅の落実を園より拾ふ
                     宮 柊二
  手のひらに転がしている青梅のみどりのかげはわが手に冷ゆる
                     武川忠一
  みずみずと青梅の実の固ければ拠りどころなしいまの鋭ごころ
                     武川忠一
  青梅の青きを拾う手のひらに確かめ難きもの確かめよ
                     武川忠一
  青梅のたわわに匂ふ木の下に待ちをり午後の速達便を
                     筒井紅舟