天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

舟虫

江ノ島の岩礁にて

 (昨日から、二泊三日の予定で兵庫県三田市の山中にきている。研修センターがあるが、買い物など近くではできないので、横浜に住む身にとっては山中の気分である。この研修センターは売却されるので、今回が最後となる。試験の監督の合間をみて、ブログに入力している次第。)

 
ワラジムシ目の甲殻類。水中生活をするわけでなく、波打際の藻や腐肉を食べる。俳句では夏の季語。


      風化とまらぬ岩や舟虫一族に   西東三鬼


  舟虫の無数の足が一斉にうごきて舟虫のからだを運ぶ
                      奥村晃作
  舟虫の鋼の胴があゆみをりそのしづこころほろぼし
  がたし                 坂井修一
                      

 今年の夏休みは、どこにも旅行する予定はない。何しようもなく江ノ島のヨットハーバー近くをさまよった。


      はまなすの熟れてくちたる残暑かな
      足音に舟虫家族ちりはしる
    
  八月の盆きて海の波高し空晴れたれど富士かくす雲 
  夏雲の立ちたる下にうすうすと大島かすむ伊豆の
  海はや


  荒潮に釣糸たれて魚を待つタバコくはへて竿先見つつ
  断崖の松の梢を飛び出でて気流にうかぶ若きハヤブサ
  水底に針のかかれる魚もゐて苦しむらむか八月の海
  破れ蓮のごとき翼をひろげたり鳶のうかべる灯台の空
  晴れたれど湿度の高き海岸はあからひく日の耐へ
  がたかりき


  繋留のヨットの帆綱風に鳴り八月の日は天頂に照る