天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

澤田政廣

彫刻材の楠

 熱海梅園に行ってきた。今年は開花がかなり遅れている。それでも2月初旬には冬至梅、紅冬至、八重野梅、八重寒紅 が咲き始めていた。従ってまだ入場無料で澤田政廣記念美術館も只で入館できた。珍しくも寒咲あやめを見た。熱海桜は三分咲きといったところ。
 澤田政廣(本名寅吉、1894年- 1988年)は、静岡県熱海市生まれの彫刻家(仏像彫刻)。十九歳で彫刻家を志し、高村光雲の高弟山本瑞雲に師事。1918年東京美術学校彫刻科別科卒業。九十三歳で没するまで、木彫作品をはじめ、絵画、陶芸、版画、書など、さまざまな芸術分野で活躍した。彼の言葉によれば、人の寿命の限界は、120歳だから、そこまで生きるつもりでいれば、人生が充実するという。


     梅園の中に足湯のありにけり
     老どちが足湯して見る梅の花
     梅園やうぐひす笛のかしましき


  八重野梅、八重寒紅に冬至梅、紅冬至、蝋梅咲き
  そろひたり


  百二十歳を目指して生きるべし六十代はいまだ昼時
  伝説のをみなの像のさまざまを髪ふり乱し彫りおこしたり
  彫刻の材とし買ひし大楠を彫らずに逝けり澤田政廣
  北斎に似たる気迫と思ひけり九十にして彫りし仏像
  糸川の熱海桜はまだ莟うすくれなゐに梢けむれる