コブシ

　モクレン科モクレン属の落葉高木。北海道から九州、朝鮮の山野に生える。春、新葉より早く梢に香気ある白花をつける。花弁は６枚で、雄蕊雌蘂が多数ある。秋には実が熟して裂け、赤色の種子が白糸で垂れさがる。シデコブシ、タムシバ（ニオイコブシ）など。

　　　　　花籠に皆蕾なる辛夷かな　　　　　正岡子規
　　　　　風の日の記憶ばかりの花辛夷　　　千代田葛彦

　　コブシは白しわが思い出にさやかなる言葉を君は忘れず
　　ありや　　　　　　　　　　　　　　　馬場あき子

　　かすかなる雰囲気を得てわれは去る辛夷の花のかがよへ
　　る下　　　　　　　　　　　　　　　　　田中順二

　　花辛夷光る朝空受験期のやうやくすぎし子らと見てゐる
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　木俣　修
　　闇の夜の森の奥処に白炎を上ぐる辛夷があかす黄泉の道
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　富小路禎子
　　遠山の木の間がくれの辛夷の花こゑあげて泣きしのちの
　　眼に見ゆ　　　　　　　　　　　　　　小野興二郎

　　空はれし一日辛夷の明るきははなびらゆれて風をよろこぶ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐藤佐太郎
　　連山に辛夷灯ればかれがれの希望といえど携えてゆく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西勝洋一