天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

かたくり

相模原市城山かたくりの里にて

 ユリ科多年草。北海道や本州中北部の山野に生える。朝鮮半島やアムールなどにも分布。地下茎は多肉・白色棍棒状で、澱粉を貯える。カタコ。古名は、かたかご。万葉集にある大伴家持の歌は、あまりにも有名。2009年4月5日、2011年4月11日のブログに引いたので、今回は省略。


     かたくりは耳のうしろを見せる花      川崎展宏
     かたかごに銀(しろがね)の日の懸りをり  石田勝彦


  日中を風通りつつ時折りにむらさきそよぐ堅香子の花
                     宮 柊二
  俯きてかたかご咲けり芽吹かむと雑木々けぶるこの山陰に
                     葛原 繁
  一花揺れ百花千花のゆれゆれて北山なだりかたくりの花
                     加藤克己
  花も葉もほのかに甘し春愁をふふむおもひにカタクリ
  食む                 後藤美子


  家持の愛でし堅香子の花あかり勝興寺の夕べ風をききおり
                     丸山郁子
  ひらくまで八年かかったかたくりの澄みきるほのほ何も
  いはない               日置俊次


  それぞれの旅の心を立て直すひねもすの雨かたくりの花
                     吉村彰子
  かたくり浄土むらさき浄土風ふけば花さやさやと地に満ち
  ゆらぐ               上田三四二


  人も草もただ春を待つ雪ふかき越(こし)を思へとかたくり
  の花                 吉田正俊