天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身の回りから

 U字形の握り鋏の類は紀元前に羊毛を刈るのに用いられたという。現在では8字形の洋鋏が広く使用されている。布地用、料理用、医用、理髪用、植木用、芝刈用など種類が多い。


  狼藉の几(つくえ)の上に見あたらぬ鋏をさがす今日も
  夜ふけて             木俣 修


  錐・鋏光れるものは筆差に静かなるかな雪つもる夜を
                   宮 柊二
  地下鉄の切符に鋏いれられてまた確かめているその決意
                   岸上大作
  あたらしき鋏をひらく刃のなかに卵に似たる夜のともしび
                   河野愛子
  いま暫しおくれてわれは戦(そよ)ぎなむ卓上に大鋏見えたる
                   岡井 隆
  鈴鳴らしベッドに鋏つかいいる遠世の鈴か夜半にひびくは
                   濱田陽子