天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

パン

わが食卓より

 メソポタミアが発祥とされ、古代エジプトでも作られた。小麦粉やライムギ粉を主原料とする。イースト菌を加えてこね、発酵膨張させて焼いた食品。日本語のパンはポルトガル語からの転化という。なお、無発酵のチャパーティーというパンもある。また、あんパンやジャムパンなどの菓子パンは日本で創られたもの。


  匂ひよきぱんを噛みつつ何故(なにゆゑ)か涙ながるる
  朝の食卓             茅野雅子


  築山(つきやま)のしげみの裏に身をひそめぼろぼろの
  パン食べにけるかも        松倉米吉


  落ちて来し羽虫をつぶせる製図紙のよごれを麺麭で拭く
  明くる朝に            近藤芳美


  白パンに含む塩さへ舌ひびく冬とはかくも透明にして
                   築地正子
  午後三時朝の残りのパンを食む昼の貧しき点景として
                   道浦母都子
  生没年不詳の人のごとく坐しパン食みてをり海をながめて
                   大塚寅彦
  ジャムパンに宿る戦前のおもかげよクリームパンに
  戦後のおもかげ          小池 光