天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

イチローを詠む(4)

マリナーズ時代

 生物であり人間であるかぎり、年齢が進むと体力・技量が衰える。観客はそれを見て腹を立てたり憐れんだりする。普通の人には経験のできない世界にバーチャルに入り込んで一喜一憂する。観客は自分の人生に照らし合わせて身につまされる。


  一試合のみ欠場のイチローを賞讃したり佐野滋紀氏は
  うたたねをしつつ見てゐるテレビにはイチロー立ちて
  三振したり


  イチローの三振を見ていらだちぬあと五試合の二十安打に
  四打席目の一安打イチローの二百安打を絶望視せり
  二百本安打ならざるイチローの十一年目に落胆したり
  ヒット打つ毎に一たすICHIメーター今年はつひに
  二百に満たず


  目標を見失ひたる観客の落胆ふかし大輔、イチロー
  下半身の衰へにありイチローの打球今年は力なかりき
  二百本安打の呪縛解かれしと明るく話すイチローなれど
  MLBポストシーズンを見るほどに「幸福の木」は
  しほれゆくなり