天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鯉幟

藤沢市新林公園にて

 端午の節句にたてる鯉をかたどった幟で、外幟は吹流しと共に五月の空を泳ぐ。わが国では江戸時代から始まったというが、古くは中国黄河上流、竜門の滝を鯉が登ると龍になるという登竜門の伝説からきている。

     風吹けば来るや隣の鯉幟      高浜虚子
     力ある風出てきたり鯉幟      矢島渚男


  鯉ののぼりを吹きなびかする風疾(はや)しはためき向ふ
  大き鯉のくち              平福百穂


  この庭に風がもて来る凪深し空に向きて大き鯉幟の口
                      穂積 忠
  畳まれし鯉のぼりの眼球の巨いなる扁平をふと雨夜におもひし
                      葛原妙子
  鯉のぼりほうとふくらみくたと降るこの緩慢なる力見よとぞ
                      川野里子