神楽
元の言葉は神座(かみくら)。天岩屋戸の前で天鈿女命が舞ったという古事が原型で、宮中の内侍所(賢所)の前庭で例年十二月に行われる御神楽に伝わる。平安中期の一条天皇の頃にその形式が整えられたという。これに対して民間で行われる神楽は里神楽と呼ばれる。遠来の神々が来て技を演じ、直会の宴、神人との交歓を経て夜明けに引き上げるという次第。俳句では冬の季語。
御神楽や火を焼く衛士にあやからん 去来
土器(かはらけ)の酒くみかはす神楽かな 龍岡 晋
足許に月のさし込む里神楽 稲荷島人
夜神楽は畳に酒を打ちて舞ふ 橋本鶏二
水上のここら流れて行く水にいとど夏越しの神楽をぞする
壬生忠見
男山暁めぐる神がきにかぐらをうたふ声のさやけさ
冷泉為相
鈴の音の身にしみわたるさ夜神楽衛士のすさびぞ羨まれける
太田垣蓮月
暮れはてて神楽の笛のひびきくる出雲の国のむらに入りきつ
岡野弘彦
参道に並ぶ大樹の空の闇裂きて元日の神楽がひびく
桐 初音
継ぐ者もなく神も老い天狗老い今年かぎりとなりし夜神楽
黒田青磁