天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

沼(1)

印旛沼

 沼は水深が5m以内と浅く、水底中央部にも沈水植物(水草)が生育する水域と定義される。関東地方では、牛久沼、印旛沼手賀沼尾瀬沼 などが良く知られている。和歌に現れる「隠沼(こもりぬ)」、「かくれぬ」は、草などに隠れてよくみえない沼のこと。また「みどりぬ」は、水草などで水面が緑にみえる沼のことである。


  埴安(はにやす)の池の堤の隠沼(こもりぬ)の行方を知らに
  舎人(とねり)はまとふ   万葉集・柿本人麿


  かくれぬの下より生ふるねぬなはの寝ぬ名は立てじくるない
  とひそ          古今集・壬生忠峯


  みどりぬに浮きたる蓮くれなゐに水濁るなり波たつなゆめ
             夫木抄・よみ人しらず
  沼の上にかぎろふ青き光よりわれの愁の来むと云ふかや
                   斎藤茂吉
  隠沼(こもりぬ)の夕さざなみやこの岡も向ひの岡も松風の音
                   藤沢古実
  鉄のごとく沈黙したる黒き沼黒き川都市の延長のなか
                  佐藤佐太郎