天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

佛手柑(ぶしゅかん)

円覚寺・龍隠庵にて

 インド原産の果実で、その形が佛の手に似ていることからの命名である。古来、慶事の床飾りとして用いられ、珍重された果実という。ミカン科シトロン類の常緑低木。幹は柚子に似て枝に刺があり、葉は楕円形。初夏、白色5弁の花を開く。俳句では秋の季語だが、これを項目にたてている歳時記は少ないようだ。あちこち探して以下の例句を得た。


     行く秋を仏手柑の只一つかな     正岡子規
     佛手柑といふ一顆置き眺めとす    高浜年尾
     仏手柑天上天下指さして       高橋悦男
     仏手柑置きて手のあく机かな     手塚美佐
     指の数決らぬことも仏手柑      大橋敦子
     湖の空揺れ仏手柑の形かな      岡井省二
     父母や掌重りのせし仏手柑       森澄雄
     真昼間や仏手柑そつとおそろし    阿部完市
     仏手柑捥ぐ手を空にかざしけり    根岸善雄