天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

芽吹く

鎌倉鶴ケ丘八幡宮にて

 樹木が新芽を出すこと。「木の芽」が春の季語で、「芽吹く」は、芽立ち、芽組む 等と共に傍題。以下の石塚友二の句は、鎌倉鶴ケ丘八幡宮の大銀杏のことだが、先年の台風で倒れた。現在は根株が残されて芽吹きを待っている。右の画像参照。


     隠岐やいま木の芽をかこむ怒濤かな  加藤楸邨
     空かけて公暁が銀杏芽吹きたり    石塚友二
     源泉に硫気ほのかや木の芽時    上田五千石


  くぬぎ林うすむらさきに芽吹きそめ山あたたかし暮るるひかりに
                      能見謙太郎
  俯きてかたかご咲けり芽吹かむと雑木々けぶるこの山蔭に
                      葛原 繁
  春芽ふく樹林の枝々くぐりゆきわれは愛する言ひ訳をせず
                      中城ふみ子
  銀色の芽吹きの中の道を来て青き卵を視たるしあはせ
                      斎藤 史
  ピアニッシモに始まる楽章をきく如く芽ぶき初めたる峠路に立つ
                      松島保子
  冬の記憶押し流されてずぶ濡れの樹々が母音のごとき芽を吹く
                      加味ます子
  出口なき思惟とはいへど芽ぶきたるものの太芽にこころあかるむ
                      辺見じゅん


     芽吹き待つ八幡宮のいちやう株