狸
タヌキは食肉目イヌ科で夜行性、方言でムジナとも言う。ただし、ムジナはアナグマの異称でもある。北海道にはエゾタヌキ、本州、四国、九州にはホンドタヌキが棲息する。エゾタヌキはホンドタヌキより少し大きい。狸寝はショックによる仮死状態らしい。徳利を提げた信楽焼の狸は縁起物であり、店先においてあるのをみかけることがある。毛は毛筆に毛皮は防寒具に利用される。俳句では冬の季語になっている。なお、「たぬき」は、「たぬ」とも言った。次の小沢蘆庵や文明の歌では、「たぬ」と読む。
罠ありと狸に読めぬ札吊りし 村上杏史
吊るされて足を揃へし狸かな 清崎敏郎
漬物石載せて狸の飼はれけり 中川利子
あなさびし狸つづみうて琴ひかむわれことひかばたぬ
鼓うて 小沢蘆庵
集りて立つ人間等生きて居り足々みだれ狸横たはる
土屋文明
たはむれに檻の狸をのぞきしにいちづなる眼もて吾は
見られつ 鈴鹿俊子
声かけしかばふりむける狸はもあかき李の実をくはへ居る
石川不二子
猫涼み狸かくるる萩の茂り花咲く前もさかりの今も
石川不二子
ふりかえりふり返りゆく子狸のそそけた背(せな)に
山紅葉落つ 紙谷ふじ乃
メガロポリス山川草木うづめむをぶらぶらとわれ毛の
なきむじな 坂井修一