天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

初春の源氏山

浄智寺にて

 仕事始めの鶴ケ丘八幡宮は、例年のように参拝者で混んでいることが鎌倉駅に着いた途端に分ったので、鶴ケ丘八幡宮方面には出ず、反対の出口から壽福寺に向かった。壽福寺本堂の庭には、鹿威しの音が聞こえていた。裏手の墓地を散策し、山道に入って太田道灌の墓を見て、その上方の寒椿の広場に出た。そこで二匹の狸に出会った。こんなことは初めてである。源氏山の頼朝像は正月の朝日に輝いていた。葛原丘の日野俊基斬首の跡を訪い、山路をたどって浄智寺まで歩いた。浄智寺では、受付裏手の力石を見て後、やぐらの布袋尊を訪ねて帰路についた。


     鎌倉や村社鳥居の松飾
     柏槙の大樹四株の御慶かな
     柏槙の大樹見上ぐる鹿威し
     めでたさや狸と出会ふ源氏山
     源氏山落葉に滑る化粧坂
     あらたまの朝日まぶしむ力石


  柏槙の古木四株の聳え立つ壽福金剛禅寺境内
  大正と昭和の俳句を導きし虚子と立子の墓地
  向かひ合ふ


  実朝の墓に参れば裏山の冬木をならす初春の風
  実朝の墓はやぐらに古りたれど今年初めの花鮮しき
  道灌の墓見てのぼる広場には椿花咲き目白飛び交ふ
  駈けてくる狸二匹と出会ひたりしばし見つめて
  左右に逃ぐる


  俊基卿終焉之地とふ立札と碑にさす今年の朝日
  浄智寺の受付裏の木の元に忘れられたる力石二個
  浄智寺の布袋の腹は黒光り人の願ひの多きこと知る