天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

靴(5)

ガラスの靴

 童話「シンデレラ」には、ガラスの靴が登場する。だが、靴はガラスではなく、「絹と銀の刺繍がされた靴」とする話(グリム兄弟)もある。舞台やアニメ映画にする際に、演出家が効果的に作る場合もあろう。現実には、ガラスの靴など履けたものではない。ファンタジイなので自由な発想が赦される。


  辿りつきたるみなもとに靴を脱ぎしばらくあれば足の
  さびしさ                片山貞美


  渋滞の車列のわきをつばさある靴はくヘルメスのごとき
  優越                 浜田蝶二郎


  思いっきり雨に擲たれてずぶずぶの靴の中なる指が歩めり
                      大石久美
  いつまでも靴を磨いてゐるやうなときには誰も声をかけるな
                      柳 宣宏
  鉄鋲の多き靴にてけられたる憶ひが愛(かな)しあまりに遠く
                      島 秋人
  この靴は濡らせないから花束は夢の渚に置いてゆきます
                      佐古良男