靴(4)
童謡「赤い靴」は、大正11年(1922年)、野口雨情作詞・本居長世作曲で発表された。野口雨情は、特定の話に基づいて作詩したのか、捏造されたものではないか、とか一時かまびすしい論争があったという。詩に裏付けを求めることも研究テーマになるのだろうが、馬鹿馬鹿しい。詩を鑑賞するのに根拠を求めるのではなく、読者が無理なく自由に想像すれば、それでよいはず。
妻の気分ほぐるる朝か庭石に洗ひてこはばる子の靴
を干す 大平修身
靴下げて入りゆく寺院(モスク)の真昼どき人は祈らず
眠りたのしむ 雁部貞夫
―――雨の日は休みーーーB4型手書き靴修理店主敬白
小畑庸子
裏向きの靴ひとつある戸口まで片足とびに行く左脚
小畑庸子
押し押され朝のラッシュにわれを踏む軍靴のやうな
若者の靴 三浦好博
にんげんの靴がつけたるホームの傷光さすときいちめん
に見ゆ 吉野昌夫