天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

数のうた

算盤

 数は、順序や量を表す概念である。その数を表すための記号が数字。数の概念は、必要に迫られて、自然数 → 整数 → 有理数 → 実数 → 複素数 のように拡張された。「無」の概念を数に取り込み、記号「0」を導入して計算の世界を拡張したことも、数の歴史において画期的であった。


  塵泥(ちりひぢ)の数にもあらぬわれ故(ゆゑ)に思ひわぶらむ
  妹(いも)が悲しさ       万葉集中臣宅守


  数ふれば空なる星もしるものをなにをつらさの数にとらまし
                後拾遺集藤原長能
  おしなべて思ひしことのかずかずになほ色まさる秋の夕暮
                新古今集・藤原良経
  八百日(やほか)ゆくはまの真砂を君が代の数に取らなむ
  沖つ島もり         新古今集・藤原実定


  もしほ草かくともつきじ君が代のかずによみおく和歌の浦なみ
                新古今集・源 家長
  零といふ寂しき数を見出でたる人よ碧空を仰ぎしにあらずや
                     葛原妙子
  ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも
                    上田三四二