天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

俳句を詞書とする短歌(5/9)

 歌集『馴鹿時代今か来向かふ』(2004年刊)「葦のむかうに」一連から。詞書として岡井自身(隆)の俳句を付ける。
  クローンの子孫さびしき花曇り  (隆)
  倫理への従順がむしろ新しくみえる未受精卵・核移植
未受精卵から核移植によりクローンを作る研究が盛んになっている現状では、それに反対して倫理に従順であろうとする態度が、かえって新鮮にみえる。クローンの子孫にしてみれば、寂しい花曇りの季節になった、という響き合い。
  旧友Y 行方知らえず 藤の花  (隆)
  方位感乱るる路面電車かな岐阜に溺愛の友を訪ねて
句では、藤の花咲く季節に行方の知れなかった旧友Yが、歌では、岐阜にいることが分り、訪ねようとしている。それにしてもこの路面電車、どっちの方向に走っているのか分らない。 

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『馴鹿時代今か来向かふ』(砂子屋書房