荒天を詠むー嵐(5/6)
青嵐わたる天竜の大き水いづくを見てもみなみづみづし
松村英一
東(ひむがし)は銅(あかがね)いろに朝焼けて嵐のあとの稲木(いなぎ)をおこす
結城哀草果
*稲木: 刈り取った稲を束にし、掛け並べて干す柵 や木組み。稲架(はざ) 。
吹きまくる烈風の中を遮二(しやに)無二(むに)、僕は歩いている、
何か焦立(いらだ)ちながら 渡辺順三
颱風にやや涼しきホテルにて一皿の梨をつぎつぎに剥く
扇畑忠雄
ひと時の旋風(つむじ)といへど昼空に紙屑をかく燦かしつつ
田谷 鋭
夏の嵐に暗く肉感目ざめつつ誠実(まこと)に執する日記をひらく
春日井 建
*上句の内容を誠実に日記に書くというのだろうか。なんともやりきれない
感情を覚える。
笹原を渡る嵐に目ざめつつ盲ひの蛇のごときさびしさ
大西民子
*下句の直喩は、よく効いている。直観的に理解できる。