天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

荒天を詠むー嵐(6/6)

  葱嶺を流沙を越えしいにしへのペルシャの盌(もひ)に砂あらし聞く
                      宮 英子
*葱嶺(そうれい): パミールの中国名。中央アジアタジキスタン最南端の
          高原地帯。
 流沙(りゅうさ): 中国,西北地区の沙(砂)漠地帯をさす。
 葱嶺や流沙を越えてはるばると伝来したペルシャ製の器を見ていて、砂嵐を
 感じたのだ。

 

  なびきゆく嵐のなかに見えそめてまぎれもあらず生命もつ糸
                      石川一成
*「生命もつ糸」とは何なんだろう?

 

  つのりくる嵐のなかに光追ひてゆくにも似たり重慶を指す
                      石川一成
重慶は、中国中部にある商工業都市。石川一成は昭和期の歌人だが、中国重慶
 の四川外語学院で2年間日本人として初めて日本語教師を務めたことがある。
 この歌は、重慶に赴任する時の気持を詠んだものであろう。

 

  あらし過ぎ三日の後を川上ゆ大青竹の泳ぎ来たりぬ
                      伊藤一彦
  高々と潮捲き上ぐる沖の龍巻この長浜に響き伝へず
                      嶋崎幸彦
  青嵐ふく夕まぐれ路地の口より鮫のあたまが出かかつてゐる
                     花山多佳子
*青嵐が喚起する幻想の世界と理解する。

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