荒天を詠むー台風(2/2)
台風が近づく夜更けペンをとる 僕は闇でも光でもない
千葉 聡
*このような歌が一番鑑賞に困る。書いてあるとおり。それ以外のことを
述べると読者の想像になってしまう。下句からは、なんのためにペンを
とっているのか、を言いたいようだが。
台風にやられちまった街路樹がふた足早く秋連れてくる
蔵本瑞穂
*作者は、街路樹の状態から秋がきたことを判断している。「ふた足早く」
とは、通常の時期よりも二週間程度早く、という感じであろうか。
台風の逸(そ)れたる空に月わたり伊豆の海照り伊豆の山照る
秋葉四郎
台風はまともに来るな田の稲の穂に出揃ひていま花の時
高橋誠一
全九州を暴風圏にをさめたる台風の目のなかなる急須
竹山 広
*台風の目と急須(大自然vs人間の日常生活)の取合せが秀逸。