天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

地球を詠む(3/3)

 地球はラテン語で「テラ(terra)」という。ローマ神話に登場する女神の名「テラ(テルースとも)」に由来している。テラは「大地」という意味も含んでいる。

  汚染せし地球吊り上げ焼くごとし雲より山を射る光帯は
                        秋葉静枝
  ほのぼのと地球の水の昇りゐむ公園草木(さうもく)月光浴中
                       浜田蝶二郎
*月光を浴びる公園の草木を見て、それらの中を昇ってゆく地球の水を想った。美しい。

  夜の水踏みゆく野犬の気配してかりそめに棲む地球とおもふ
                        小中英之
*上下句の取り合わせが独特。生活しているとこうした感想を抱くこともあるのだ。

  いつしかに洗濯物に陽の当たり地球はわれのためにも動く
                        福崎定美
  動物園にカバの子産まれ春の地球(テラ)重たくなりて日暮れおくれる
                        山下和夫
  自転する地球とともに脈を打つ全生物の遺伝子あはれ
                        鵜飼康東
*地球上の生命の根源を詠んで共感をよぶ。

  皓々と月冴えて照るこの夜半も地球は飢ゑに泣く子を抱く
                        近藤総子
*先の「カバの子」と言い、この「飢ゑに泣く子」と言い、地球が引き受けていることを思うと、敬虔な気持にさせられる。

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地球